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長井長義公開フォーラム

公開フォーラム5

コーディネーター:原 昭二
このフォーラムのはじめに、「これから薬学はどうなる?」という話題を提示しました。
□ 未来を志向する「評品バンク(公的化合物ライブラリー)、医薬品研究・開発、実験データベースの構築」「システム薬学の構築」・・・・
本日挨拶されました前会頭の長野哲雄先生は、創薬の要として「評品バンク(公的化合物ライブラリー)」の構築を緊急の課題として提唱されています。
さて、ここで「システム薬学」の動向を、「システムズ薬学研究機構」幹事長の宮城島利一さんにご披露戴きたいと存じます。なお同機構の会長は、このフォ−ラムの実行委員長、寺田 弘先生が務められています。宮城島さん、どうぞ。


宮城島利一博士(システムズ薬学研究機構・幹事長)
ゲノム創薬からシステム薬学へ

1.
システム薬学研究について、簡単に紹介させていただきます。

2.
1990年代の後半に、ロボットを用いたコンビナトリアルケミストリー、ハイスループットスクリーニング、さらに数百から数万の遺伝子を同時に解析することが可能なDNAマイクロアレーといった革新的な創薬技術が登場しました。一方、ゲノム科学も、ゲノム解析から、mRNAやタンパク質の解析技術が開発され、ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクスへと進展してきました。このような技術は創薬研究に強いインパクトを与え、創薬研究の実態が著しく変わり、薬の研究開発の成功確率が高まると期待されました。

3.
この図は2000年から2008年までに日本で承認された新薬数です。このグラフから明らかのように国内企業発のオリジンの新薬は低迷が続いております。一方、外資系オリジンの新薬が高いシェアを占めていますが、海外の製薬企業も新薬の創製に大変苦労しております。

4.
革新的創薬技術の潮流により、従来の手づくりのオーソドックスな創薬から、有機化学も生物活性のスクリーニングも自動化され、大量でかつ網羅的な処理の時代になってきました。しかしながら、現実には、ゲノム創薬に研究シーズや技術を求めたものの、抗がん薬以外新薬へは至っていません。大事なことは量でなく質であり、個々の力であり、組織の総合力です。

5.
では、どのような質や総合力が必要でしょうか。現在の創薬アプローチは有機化学、分子設計、分子生物学、薬理学などからなる継ぎはぎ細工です。継ぎはぎ細工を科学にして発展させることです。そのために、システム生物学を軸に構造、標的分子、薬効の各ユニット間の連携を総合的に理解するシステム薬学を取り入れることが重要であると考えております。

6.
この図は、アラキドン酸代謝ネットワークです。アスピリンは、標的分子であるCOXを阻害することにより、プロスタグランジンの産生の低下を通して、痛み、発熱、炎症、さらに抗血小板作用などの体内で多くの役割を演じております。体内のネットワークは大変複雑です。細胞内相互作用ネットワーク、薬と標的分子、疾病原因遺伝子に関する詳細な研究は、有効性が高く、より安全性が高い標的分子の選択や相互作用の解明に大変有用です。

7.
創薬研究にシステム薬学研究を取り入れることにより、日本発の新薬の低迷からの脱却に大きな役割を発揮できると考えております。



コーディネーター:原 昭二
ただいま映写しているのは、桐山製作所、桐山弥太郎さんが、嗜みとしてお作りになったガラス細工のミニチュアです。もちろん腕を磨くための嗜みと存じますが。オーケストラの楽器、そして数々の仏像、どれも真似の出来ない、見事な芸術作品です。閉会に当たり、ガラスの仏像に手を合わせつつ、解散としたいと存じます。
有難うございました。

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