CREATIVE BOOK「首都圏人」:首都圏に居住する人々の、クリエイティブな暮らしを支援する生活読本

首都圏人ホームページ

長井長義公開フォーラム

挨拶

前(社)日本薬学会々頭 長野哲雄先生(東京大学教授、薬学部)

皆様本日は、フォーラムに出席のため、日本薬学会館にようこそお出掛け戴きました。私は、この三月まで本会の会頭を務めさせて戴きました。このフォーラムは、(社)日本薬学会の公式行事ではありませんので、前会頭としての立場ではなく、長井先生のお弟子さんの末席を汚す一人として、その繋がりで話しをさせて戴きます。長井先生は、明治のころ、東京大学薬学部薬化学教室の初代教授として、日本の薬学を創始されました。私は、この薬化学教室を受け継がれた、三代目に当る岡本敏彦教授の指導を受けました。実はその本流から分かれ、新しい「薬物代謝教室」がつくられたのですが、現在私はその教授をつとめております。したがって支流に当たるわけですが、長井先生の末裔として、今日は、長井先生が発見されたエフェドリンにまつわる、最近の私の研究を披露したいと思います。昨年、私はアメリカのAnalytical Chemistryという、世界的に広く知られているジャーナルに、研究成果を報告しました。私たちの研究領域の中には、薬物の一つである麻薬とその取締り、という分野があるのですが、覚醒剤として社会的にもよく知られるメタンフェタミン(戦時中は「ヒロポン」と呼ばれ、労働力を増進するためにひろく使われた化合物)が、いずこかで作られ、密売されており、服用する若者を蝕んでいます。実はメタンフェタミンは、エフェドリンと密接に繋がる

化合物で、エフェドリンから化学的に誘導されてつくられます。原料となるエフェドリンは、いまもマオウを原料としている場合と、マオウを使用せず、最初からフラスコの中で、化学的につくられるものがあります。世界的な視野で、覚醒剤の取締りをするには、密売される覚醒剤の由来が、マオウか、非マオウかを見破ることが必要になります。私の論文は、エフェドリンがもつ窒素原子に注目、窒素原子の同位体(原子核の中性子の数が異なる原子)の比率から、天然由来か、非由来かを決める新しい手法(分析法)なのです。エフェドリンの研究は、現代においても、重要であり、新鮮な研究対象でもあるのです。
私の話しはこの位いにして、エフェドリンを発見した長井長義先生のお話し、”ロマンと情熱の志士「長井長義」”と題する、宮田親平さんのお話しを拝聴することに致しましょう。
宮田さんは薬学出身の「医学・科学ジャーナリスト」として高名な方です。

Copyright (C) 首都圏人. All Rights Reserved.

ホームページテンプレートのpondt